ちっこいおじさんのはなし

物事にはタイミングというものがございます。

たとえば、好日。
なにごとかを成すにはとても良いタイミングということです。「日々是好日」なんていうのは、要するに毎日やる気満々なわけですね。
まあ、どんだけポジティブなのかと。
これを考えた人は、朝から頭上に鳩の糞が落ちてきても、「植木鉢じゃなくて幸い」と笑い飛ばせる大人物に違いありません。

対して、三隣亡。
自分だけならいざ知らず、三つ隣まで亡。災い転じて福と成す、などという言葉もありますが、隣組全滅な災い状態では、何をどう転じようが、福どころか貧乏神までわらじを差し出す悲惨さです。

田坂の場合、さすがにそこまで哀れではありませんが、実はちかごろ、ちょっとした破壊の連鎖の渦中にいます。

クルマをぶつけて、職場のPCが壊れて、胃カメラを飲んだことは、順不同にてお伝えしたとおりです。ていうか、当ブログのすべてです。名ばかりのGTです。「グランツーリスモ」どころか、早くも「ゴシップ手詰まり」の様相を呈しています。

そんな閉塞的な日常を打ち破らんとばかりに、田坂ン家では、家庭用ロボット掃除機ルンバ560が故障し、居間の蝶番がはずれ、自宅のパソコンが起動しなくなり、金魚の水槽が臭うセンセーショナルな出来事が続いているのです。

特にルンバ560。保証期間満了のわずか一週間後に、動作エラー。アメリカからやってきたもんだから、エラーメッセージもネイティブイングリッシュ。ロボットにはコミュニケーション能力が一番必要だというのに、あたかも田坂の豊富なセサミストリートうんちくをあざ笑うかのように意思疎通ができません。おう、くっきー!

こうもタイミング良く故障するなど、偶然にしてはできすぎていると思えやしませんか?ここは、「何かに操作されているに違いない」と、正しい左翼らしく陰謀説を唱えるべき場面でしょう。

思いますに、
21世紀も10年になろうとする今日、バイオメカトロニクス的な技術がすでに確立されていて、電化製品には保証期間が満了するのと同時に、構成部品を小さく破壊するマイクロマシーンが埋め込まれているのではないかと。

しかも、人型。けして見つかってはいけないので、かなり小さい。仕事柄、汚れ役でも黙々とやり遂げるイメージから、容姿は中年男性。ややメタボ気味の「ちっこいおじさん」です。

量産型の宿命として、製造効率重視のため、デザイン的にはイマイチな見てくれですが、薄い頭皮はバーコードではなく、QRコードなところが今風です。携帯をかざせば、「俺の若いころは」から始まる暑い(ママ)メッセージが届くという、遊び心も忘れていません。

彼らは、自らの使命にプライドを持っています。そんなパッションを表す象徴、白い丸首シャツには、ゴシック体で「WE ARE THE ホコリ」とプリントされています。革命的な残念さです。

ちっこいおじさんは、メーカー保証が有効な一年間、精密機器の隙間で、誰も聞いていないダジャレを日々つぶやくことで過ごします。Wi-Fiの中に棲んでいる者のなかには、TwitterをやっているIT派もいるようです。

そして戦いの日、
ちっこいおじさんは、コンデンサを破裂させたり、センサーを断線させるなど、地味ながらも確実な方法で仕事を完遂するのです。

そして、
やり遂げたちっこいおじさんは、静かに倒れ、やがてサラサラと砂が霧散するように消えていきます。BGMは「ナウシカレクイエム」。ららん、らんらららんらんらん〜♪

近ごろは、販売店・長期5年保証などという制度もあって、ちっこいおじさんの夭折は報われない悲劇に終わることもあります。しかし、散った彼らの亡骸は、実は胞子だったので、その志は消えず、次世代に受け継がれていくことでしょう。

皆さまも、黄砂や花粉の季節には、ちっこいおじさんの面影をさがしてみてください。