たて笛と雷三

宇栄原市営団地「給水塔」の美しさにつき,議論が尽きない中,大変失礼いたします。大阪出張所の田坂でございます。

当職が無類の「猫好き」であることは,すでにご案内のとおりでございますが,中でも忘れられない,とある猫のことにつき,お話しさせて頂ければ幸いです。

それはまだ,当職がたぎる正義の血潮に圧され,同級生女子の「たて笛」を狙う一味と日々戦闘を繰り広げていた,遠い昔のことでございます。
学校からの帰り道にある「祠(ほこら)」から,いつもこちらの方を睨んでいる,とても強そうな野良猫が一匹おりました。

ぼさぼさの毛並みのトラ模様をしたその猫は,きまって午後3時ころになるとその祠の前に現れ,およそ野良猫にあるまじき,招きネコのように安定感のあるたたずまいにて鎮座し,三日月型の一生傷のせいで見えなくなってしまった左目を閉じたまま,残った右目だけで,行き交う小学生を睨み付けるのです。
当職らはいつしか,この野良猫を,尊敬の念を込めて,「月の輪(つきのわ)の雷三(らいぞう)」と呼ぶようになりました。

そんなある日,当職は見てはならないものを見てしまったのです。

いつもの祠に,雷三の姿が見あたらない。代わりに少し離れた駐車場から聞こえる,さかりのついた「まーうー」という猫たちの声。ふっと目をやると,今,まさにことに及ぼうとする雷三の姿がそこに!しかも,「下」になって,「されている」ではありませんか!

そのショッキングな姿を目撃したのは当職だけではなかったようで,翌日,登校したそのときには,教室の黒板を使って,詳細な図にして知識の並列化に勤しむ,たて笛海賊団一味の姿がございました。
結果,雷三を屈服させた「謎の技」につき,先生に是非,教えてもらおうということになったようでございますが,大学を出たばかりの女性教諭は,ただ,理由も告げず,一味をひどく叱り飛ばすのみであり,なし崩し的に「たて笛」も守られることとなりました。

なおその後,少年たちが大人になるには,もう少し時間を要した旨,側聞致しております。

以上,取り急ぎ,失礼いたします。